[ 掲載日:2022年1月21日 ]
組織のReskilling:思考のダイバシティ× 集合知の使い方
2022.01.21
前回のBlogでは、今求められる組織運営のスタイルである「Regroup and Restart」の捉え方とともに、昨今のハイブリッドワーク環境下では、組織内の個人が「組織」に対する議論に慣れていないことや、個々人が考えをまとめるまで口を開かないというような“症候群”によって、これまで以上に、個人の多様な視点や知識を集合知として組織の経験に結びつけにくくなっている傾向について指摘をしました。
今回は、さらにそれを掘り下げ、「思考のダイバシティ×集合知の使い方」について考えていきたいと思います。「Agile(アジャイル)」という都合のいい言葉で語られる領域です。
多様性の高い意見が自然に進化する組織運営
これまでの事業環境では、中計や事業方針などの組織内コミュニケーションにおいても、比較的経営(組織の長)が「決めた方向性」(所謂「答え」)について組織内の「腹落ち」を活性化することに注力をしていました。しかし、パンデミックの環境下では、ますます先が見えず、明確な方向性や計画を示すことが困難になるため、むしろ変化し続ける事業環境に対して、組織の適応力や柔軟性を高めることで、組織がさらに自律的に考え動けるような状態を目指すことが求められます。
つまり、「答え」ではなく、自事業における「狙い=意図」や「チャレンジ」などを組織で流通させることにより、多様性の高い意見が自然に進化する組織運営のあり方を模索すべきでしょう。
その鍵は、思考のダイバシティと集合知です。
経営から「?」を共有し、共に探求する
しかしながら、多くの企業では、まだまだ経営・リーダーが“全てをわかっている感を出さなければいけない”という組織の見えない圧に苦労している姿が見え隠れします。わかっている“風”な雰囲気で、結局これまでと変わらないWhat(戦略方針)が示されることで、組織は、なぜこの環境変化の中でこのWhatのままなのか?が見えず、機能不全に陥るケースも多々見られます。
これからの組織は、事業の意図を明確にし、今後注力すべきチャレンジに組織の目線を合わせるためのコミュニケーションを密に行うことに慣れていかなければなりません。経営・リーダーが、意図と大きなチャレンジを組織に投げ入れ、組織の努力の方向性を常にアップデートすることにフォーカスし、組織の多様な意見が一定の方向感で磨かれる文化への変革が望まれます。
集合知の活用を阻害する環境的要因
組織が、意図に共感し、チャレンジに努力を集結するように、集合知をうまく活用できるようにするには、誰もが安心して発言できるという組織に対するTrust(信頼)や、心理的安全性なども重要になります。
しかしそれ以前にメンバーが自分のアイデアをその場に投げ入れ、それにまつわる議論を相互に深めるようなコミュニケーションのスキルをもつことも重要です。意見が出せなければ、集合知に貢献はできません。
我々の経験では、ワークショップなどの自事業の議論における「アイデアをぶつけ合ってみましょう」という投げかけに、自分の意見を検証した上で(正しいと感じた上で)しかアイデアをテーブルに乗せられない人が8割方、ということが多々あります。この傾向は事業部など縦のラインを含むグループ(上長がいる場)より、同階層のグループの方が一層顕著に現れます。
これは、組織が硬直化している典型的な事象です。「意見があっても出せない」という組織の環境的要因です。
この多様性を阻害しがちな傾向は、グローバルでの組織開発の取り組みとして行うKICK OFFミーティングなどの場でも、組織能力(Capability)上のさまざまな課題として現れます。
組織のReskilling (個人の知識から組織の経験への接続)
これらは全て、個々人の努力だけでは飛躍的な変化は望めず、組織全体でのリ・スキリング(Reskilling)が必要な分野です。では、組織としてどのようなReskillingがあれば、個人の知識・思考が組織の経験に接続され、集合知として活用できるようになるのでしょうか。
例えば、これまでもリーダーシップ研修などで重視されてきた「事業全体のビックピクチャーを捉える全体視点」や「価値創造の仕組みに対する見立て」などは、これまで以上に見えにくくなっており、組織の全階層において認識の再構築が必要になります。
また、事業の先行きがこれまでの延長線では捉えられないことから、より抽象度の高い議論や創造力・想像力を重視した対話力も重要になってくるでしょう。
さらに、成長に向けたアプローチ、そもそも仕事とは何なのか、このような環境下での周囲やチームへの影響力の発揮の仕方(これまでとの違い)、よりWhyのコミュニケーション(意図の共有)を重視したリーダーシップスキルなども見過ごせません。
ただし、これらのReskillingは、個々人がバラバラに努力し、スキル研修のような形式で知識を高めても意味がなく、あくまで集合知として組織の中で活かされなければなりません。
以下の引用文にあるように、個々人の知識やスキルレベルに焦点をあてるのではなく、これらのReskillingを、組織開発の実践の場を通じて、組織力として高めていくことが重要です。
次回は、この「個人の知識や思考から組織の経験への接続」の実践事例として、アジャイル型組織への変容(トランスフォーメーション)を試みるプロジェクトを軸に深めていきたいと思います。
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