[ 掲載日:2022年12月9日 ]
アジャイル志向の組織への変容 ― 方向性と組織行動のアップデート
2022.12.14
今期は、混沌としたコロナ禍のその先の成長を目指して積極的に動き出す変革現場のプロジェクトが多く、過去ブログでも、今求められる組織運営のスタイルである「Regroup and Restart」や、思考のダイバシティ×集合知の使い方として重要になる「組織のReskilling」などについて発信してまいりました。
今回は、さまざまな変革現場からより具体的に見えてきた実践事例をもとに、アジャイル志向の組織への変容(トランスフォーメーション)を試みるプロジェクトについて考察を深めていきたいと思います。
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数年前から、多くの日本企業で、組織の実行力やスピード感を強化するという文脈で、アジャイルというキーワードが経営から発信されるようになっています。しかしその多くが、まずは新しいハコ(新組織)を作る、体制を変えることから組織改革を始めようとする、つまり組織内部に着眼した取り組みになっているケースが多く、その初めの一歩からボタンを掛け違えている結果、いつまで経ってもうちの組織はアジャイルにならないと経営が嘆いている場面によく直面します。
アジャイルフィロソフィーの要件1: 組織の目線問題(組織の目線が外か内か)
もともと、アジャイルという概念はソフトウエア開発の現場で生み出されたものですが、昨今の企業経営においては、これまでのあたりまえであった主に安定を目的に設計された「伝統的」組織(サイロ化した構造的な階層構造)に対して、このVUCAの時代において、安定性に加えて速度と学習、価値創造を備えた組織へと変容することを指し示し、うたわれるようになりました。
前提になるのは変化と不確実性であり、その中でも能動的に変化の兆しをオポチュニティとして探求し、ビジネスチャンスに変えていくことを実現する組織行動に他なりません。(*「アジャイル」の定義は諸説ありますが、今回のブログの中では上記のようなイメージで考えてみてください。)
つまり、本来的には、アジャイル志向の組織は、変動する外部環境に対し、誰に価値を生み出し、どのように価値を創造するかを常に探求しながら行動を続けていく組織を指します。
そう考えると、アジャイルの初めの一歩は、外部の変化に着目しオポチュニティを発見(想像)することから始まるのです。
しかしながら、多くの組織では、「自社の課題を探し、それに対処する」と言うように、最初に組織内部の分析から始めてしまい、内向きの課題解決に終始してしまいます。
アジャイル志向の最初の着眼点は、外を見る視点に揃え、何を成すのか?を定め、組織全体で試行錯誤と学習に全力で取り組むことです。これによりさまざまな提供価値の可能性を広げるチャンスと捉えることです。
アジャイルフィロソフィーの要件2: 組織の認知問題(認知×妄想×具体化できるか)
それにも関わらず、実際には、外部目線で事業の現状と今後のオポチュニティについて対話しようとすると、以下のような課題に直面します。
・機能分化の弊害: 今までの仕事の仕方によって、役割分担が徹底されており、部署間における事業を語る目線の凸凹が大きい。そのため、事業に対する共通見解がなく、事業の全体感について日常的に話されない。話されないと認知もできなくなる。
・組織としての想像の限界:仮に事業の全体感が掴めたとしても、その先のオポチュニティを想像することが組織としてうまくできない。組織内で相互的に想像を刺激し合う会話は、自分の考えを口にすることが不可欠。
・組織内の曖昧語で語る癖:いざ、これは試してみてはというアイデアが出たとしても、曖昧語で語る癖が染み付いており、そのアイデアの芽を組織で考え、具体化ができない。
これらの現象は全て、日常の業務の延長では見えにくく変わりにくいものです。これらを意図的に見て変えるためには、ビジネスの視座・全体感・経営目線で事業を捉える機会や、アイデアを話し合う習慣が組織行動として必要です。
アジャイルフィロソフィーの要件3: 組織の判断基準問題(これまでのあたりまえを変えられるか)
さらに重要になるのは、組織全体で、組織におけるこれまでのあたりまえを変える意識を揃えることです。前述の要件1にあるように、外部目線で新たな事業のオポチュニティを見つけたら、トライ&エラーの実験の姿勢でスピーディーに動いていくことが求められますが、そこでは、フラットな構造での迅速な意思決定と学習サイクルが要になります。
しかし、多くの組織が、経営から変革の号令だけを声高にかけて、「何のために何を成すことを狙って何を変えるのか、いつまでにどの程度の変容を目指すのか」などを具体化しないため、これまでのあたりまえを良かれと思って熱心に遂行しようとする善良な社員たちによる現場の重力(個別主義に基づく効率化思考)が、さまざまな現場組織の変革行動の芽を摘んでしまいます。
野原を冒険する少女。良かれと思って見守る周囲の人が
無意識に持っているハサミでそのイノベーションの芽を摘むいでしまう
よって、特命部隊のように先陣をきって変革をリードしようとするメンバーが、いざ自由や権限を与えられても動けない、組織内部でその動きが相殺されてしまう現象がよく見られます。
アジャイルとは、戦略論でもなく組織(体制)論でもなく、組織全体の組織行動(組織文化)を変える試み
以上、冒頭で述べた課題意識通り、多くの日本企業で、経営から発信される「アジャイル志向の組織への変容」のプロジェクトの多くが、なかなか機能しない要因や背景について、ほんの一部ながらも触れてきました。いままさにその実践の渦中にいる組織の方も多いかと思いますが、ぜひ、下記のポイントを刺激に、組織内の方々と、この先の組織の行動のあり方について、現在地確認をされてみてはいかがでしょうか。
<Check Point> アジャイル志向の組織への変容を実現するために、われわれの組織は現在、どのくらい機能しているか?
経営からの方向性の発信:
□経営からの発信だけでなく、組織の変容の方向性について絶えず議論されているか?
□方向性に関わる前提条件を確認しあう機会があるか?(上位方針、及び市場の変化など)
□上記について部署間をまたいで、他部署との関わりの中でも試みる機会があるか?
→新組織や一部の組織の活動ではなく、全体で。経営からの発信は大方針の提示だけではなく、それを組織全体の共通目線で、各事業の戦略の具体化に落とし込むところまでをスコープに。
組織内の戦略的対話:
□方向性が必要とするチャレンジや変化を具体的に認識できているか?
□それぞれの目論みや学習を共有する機会があるか?
□具体的なアクションが常に話し合われているか?
→組織内での戦略的対話として、できるだけ組織全体で、自社の事業環境を外部目線から考察することから始める(従来の縦割り構造の目線で議論しても、新しい発見は生まれない!)ことと、その解像度を高め、事業における変化を促すキーチャレンジやオポチュニティを明確にすること。
組織内の新たな価値観と文化のアップデート:
□組織の新たな価値観が言語化され活用されているか?
□その価値観による行動修正が常に行われているか?
□アクションからの学び(失敗も含め)、学習することをポジティブに捉えているか?
→そのアイデアを実現/実行するために、変えるべきこれまでのあたりまえを明らかにすることと、これまでのやり方で行おうとするとどうなるか?具体的にどのように変えるべきか?を常に組織で問い、軌道修正しながら動くこと。
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